今を生きる珠洲焼
出番をもっと。
現代の暮らしに溶け込む珠洲焼の提案。
山田 睦美
能登半島最北端で生産される珠洲焼は、焼き締めた灰黒色の肌合いや、素朴で大らかな造形が特徴である。しかし、その特徴が逆に現代の使い手からは敬遠される要素になっているのでは、と懸念する山田さん。
「重い、扱いにくいといった印象を与えているように思います。そこで、普段使いをしても苦にならない使用感とか、和と洋が共存する現代の空間にしっくりなじむたたずまいとか、そんな器を提案したいと考えています」まず、形や重さを再検証。使い勝手のいいフォルムや、女性が片手で持っても重く感じない重量を選び出した。「釉薬をかけていない焼き締めの器にとって、一番いいメンテナンスは、毎日使うこと。使い込むほどに艶が出てしっとりしてくるんです」。手ざわり感も視野に、器の出番を増やすことを目論んだのである。
今回の出品作も、彼女のそんな思いをよく伝えている。どんな生活空間にも溶け込む、シンプルで使いやすい用の器。ピッチャーやカップに施した山田さんらしい象嵌は日常のひとコマを優しく彩ってくれそうだし、美しいシルエットの花器はきっと和洋どんな花を挿しても似合うに違いない。
「毎日使って育ててもらえる器になれば」と山田さん。珠洲焼を暮らしにもっと近づけようと、目を輝かせて創作に励んでいる。