木の癒しを、暮らしの中に
木のぬくもりや表情を、日々の空間にプラスして。
生地 史子
手触り、香り、木目の美しさ。 人の五感に働きかけ、癒す力が木にはある。 「温かみややさしさはもちろんのこと、木目には個性があって、ひとつとして同じものができない。 そんな味わい深さが木の魅力です」。 生地さんの手で削り出された器は、木そのものの味わいを生かした、 潔いまでにシンプルなデザイン。 ボウル、プレート、カップなど、流れるような木目と素材のぬくもりをそのままに、ガラスコートまたは漆で仕上げられている。
生地さんのスタンスは 「あまり手を加えず、木そのものの味わいを引き出すこと」。 木の表情を見つめ、言葉に耳をすませながら削り出せば、木はやさしい輝きを放つ。 自分を表現する手段としての制作ではなく、木の魅力を引き出す控えめな裏方のつもりでいる。 だから器たちは生き生きと素直で、 あたたかい。
展示会やマーケットなど、 使い手の声を直接聞くことができる機会を大切にしている生地さん。 「自分の作ったものが誰かの生活の一部となり、その人の癒しとなる。 こんなにうれしいことはないです」。 漆器の産地、山中で学んだろくろ技術を生かし、慈しむように木と向き合う日々。 暮らしにとけ込み、長く愛される器をこれからも作り続けるつもりだ。