月明の三段重・十二角盆
Tiered Food Boxes, Tray
加賀蒔絵にひとめぼれして漆芸の世界に飛び込んだ大坪さん。木地、塗り、蒔絵、沈金の一連の技法を身につけた今は、華やかな蒔絵ではなく、かたちの美しさや、よく見ると分かる丁寧な仕事で、漆芸の魅力を伝えたいと考えるようになった。
三段重は、今の生活スタイルに合う質感とサイズ感、そして漆では表現が難しいとされる「白」にこだわった。曲輪で仕上げた能登ヒバの木地に土佐和紙を貼り、銀粉を全体に蒔く。その後、 石川県工業試験場で開発されたパール白漆を3 度擦り込む。月明かりに照らされたような、あるいはこれ自体が発光しているような、独特の佇まい。十二角盆は厚みと凹凸がある越前和紙を貼ることで、和紙の質感が感じられる仕上げに。シンプルとは簡素であることを意味するのではなく、時間と手間ひまをかけた到達点である、と実感できる。