ストール、スカーフ
Stole, Scarf
染色にひかれ、金沢美術工芸大学に学び、現在は金沢卯辰山工芸工房に在籍している井上さん。普段は「生命のはじまり」をテーマとしたアート作品を制作している。植物が芽吹き、葉を広げていくような。水の中で生まれた微生物が変化していくような。生命の力強さや儚さを感じさせるモチーフを、広い空間を占める染色作品に表現する。
井上さんの世界観を身につけて感じられるのが、ストールとスカーフ。絵画技法であるデカルコマニーを応用して偶発的な模様を染め、そこからインスパイアされたイメージを友禅技法で描き足していく。防染糊の使い方に独特の工夫を凝らす。最後に流水で糊を流すと、シルクの上に抽象と具象を掛け合わせた独特の模様の世界が立ちのぼる。まとう人を深い思索の森に誘うような存在感と、ふわりと軽やかなシルクの風合いのコントラストも楽しい。