山中漆器 共木付薬籠茶筒 『KISEN』
Yamanaka Lacquerware; Tea Caddy
ろくろ挽物で国内屈指の技術を誇る山中漆器。「縦木取り」という木材の切り出し方をするのが山中流で、これにより装飾的な模様を刻む「加飾挽き」や、光が透けるような「薄挽き」が可能になる。木地師をルーツとする我戸幹男商店の4代目我戸正幸氏は、「木地の山中」のアイデンティティを守りながら、デザイナーとコラボしてモダンな漆器をプロデュースしている。
『KISEN』と名付けた茶筒もそのひとつ。通常、茶筒は湿気や乾燥を防ぐために被せ蓋の薬籠構造で作る。蓋が被さる胴の薬籠部分を作るためにはその分だけ胴と蓋の木目がズレる。『KISEN』では木目を最大限合わすために、別材料をわざわざ継ぐ付薬籠構造を採用した。蓋を開け閉めするときの、木肌をなめらかに滑る感覚も心地よい。
自然の素材を自然にある以上に美しく見せる。機能性だけでなく造形の可能性を追求する。オブジェのような茶筒は、工芸の懐の深さを改めて教えてくれる。