暮らしを彩るうるし
加賀百万石が育んだ彩りと機能を、現代の生活空間へ。
株式会社 能作
岡 裕之
創業安永9 (1780) 年と長い歴史を誇る能作。 代々金沢漆器の製造販売を手がけている。 加賀藩主の庇護下に育まれた金沢漆器は、貴族文化の優美さと武家文化の力強さを併せ持ち、大名の武具や調度品として発展したことから、その作りは精緻で堅牢。蒔絵に代表される高度の加飾技法や繊細な薄作りが特徴だ。
調度品とともに、金沢漆器が得意とするのが茶道具である。 金沢は茶の湯の盛んな土地。茶道の空間を彩る名道具が多数、能作のもとから世に送り出されている。 だが、近年茶道人口が減少し、茶道具を手に取る人が少なくなってきた。 茶道の世界で磨かれ、育まれた道具の洗練美、機能美にもっと触れてもらえないか。 金沢漆器のすばらしさに気づいてもらえないか。 それが今回の 「彩うるし小箱」 の提案となった。
長年茶器として親しまれてきた形を漆でシンプルに塗り上げた小箱である。 ジュエリーでもキャンディーでも、お気に入りを入れる箱として和洋を問わず、日常の空間に置かれることが意識されている。 繊細なフォルムや美しい風合いは金沢漆器ならでは。 「いずれは蒔絵なども使って季節感を楽しむものも提案できれば」 と、岡さん。 伝統工芸の行く方を注視している。