華の切子
幾重にも重ねた色が、光が、切子を通して花開く。
浅野 恵理子
ガラスにガラスを被せる 「被せガラス」 の手法でベースの形を作り、グラインダーで丹念にカットしていく。 それが浅野さんのガラスの表現法だ。 無色透明なガラス、さまざまな色ガラス、さらに不透明なガラスと、浅野さんが被せるガラスは色とりどり。 そこに切子細工を施すとカットした面から複雑な色と光がこぼれ、模様はより豊かに華やかになる。 「それが楽しいんです」 と浅野さん。
今回出品した蓋物は、お茶会の道具。 茶室という空間とのマッチングを念頭に、道具としての重さやフォルムが吟味された。 色を重ねた茶器と香合はどちらも、愛らしいたたずまいに深遠な輝きを秘めている。一方、白い不透明ガラスを被せた香合は名の通り、華のかんむり。 切子の断面からのぞく赤い光が、お茶会という伝統のひとときに新たな彩りを添えている。
ジュエリーは、ふだん気軽に使えるものをとの意図で制作された。 生物のようにも何かの意匠にも見えるフォルムが楽しく、透明な色ガラスと不透明な白色ガラスとのコンビネーションも興味深い。 胸元を不思議な存在感で飾ってくれそうだ。 生活を彩る華のような切子を求めて、制作に没頭する日々が続いている。