煌めく漆
今の暮らしを彩る小物を、螺鈿という表現で提案する。
川村 友美
ときには虹色、ときには幻想の青。 螺鈿の表情は光とともに変化し、言葉ではなかなか形容しにくい。 貝の内側の層から小片を切り取り、それを漆にはめ込む技法に川村さんが出会ったのは、高校生の頃。 複雑な輝きに魅入られたその瞬間が、漆芸への入り口となった。 幅1mmあるかなしか、細長い極小のかけらが漆の中に連ねられて生まれる独特のきらめき、色合い、表情。 それが川村さんの螺鈿である。
酒器2点にその特徴がよく現れている。 「虹の杯」 は、工房のある卯辰山の風景がモチーフ。 木目が活きる摺り漆を内側に、螺鈿を外周に施し、木々の間に虹がかかる様子を表現した。 乾漆の 「氷脈」 は、大きな氷片が重なりあって山脈状になった状況を描いたもの。 螺鈿と銀蒔絵で表した自然のダイナミズムが、お酒を飲むひとときをさらに豊かにしてくれそうだ。
一方、螺鈿、卵殻、蒔絵といった伝統の加飾技法を活用したブローチは、どれも鳥の姿。 着飾ってすまし顔の鳥もいれば、花や月の形を借りた鳥もいて、ポップな川村ワールドが展開されている。 漆本来の風合いや伝統の技を大切にしながら、それを現代の暮らしに再構築する川村さん。 今後がますます楽しみである。