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煌めく漆

今の暮らしを彩る小物を、螺鈿という表現で提案する。

川村 友美

ときには虹色、ときには幻想の青。 螺鈿の表情は光とともに変化し、言葉ではなかなか形容しにくい。 貝の内側の層から小片を切り取り、それを漆にはめ込む技法に川村さんが出会ったのは、高校生の頃。 複雑な輝きに魅入られたその瞬間が、漆芸への入り口となった。 幅1mmあるかなしか、細長い極小のかけらが漆の中に連ねられて生まれる独特のきらめき、色合い、表情。 それが川村さんの螺鈿である。

酒器2点にその特徴がよく現れている。 「虹の杯」 は、工房のある卯辰山の風景がモチーフ。 木目が活きる摺り漆を内側に、螺鈿を外周に施し、木々の間に虹がかかる様子を表現した。 乾漆の 「氷脈」 は、大きな氷片が重なりあって山脈状になった状況を描いたもの。 螺鈿と銀蒔絵で表した自然のダイナミズムが、お酒を飲むひとときをさらに豊かにしてくれそうだ。

一方、螺鈿、卵殻、蒔絵といった伝統の加飾技法を活用したブローチは、どれも鳥の姿。 着飾ってすまし顔の鳥もいれば、花や月の形を借りた鳥もいて、ポップな川村ワールドが展開されている。 漆本来の風合いや伝統の技を大切にしながら、それを現代の暮らしに再構築する川村さん。 今後がますます楽しみである。

虹の杯 & 氷脈

虹の杯 ¥ 42,000 / 氷脈 ¥ 28,900

トリブローチ

トリブローチ
「カラス」 ¥ 13,200 / 「リボン」 ¥ 12,600 / 「きらきら星」 ¥ 9,500 / 「bird」 ¥ 9,345 / 「moon」 ¥ 8,900 / 「ハナミズキ」 ¥ 9,345

Reasons for selecting選定のポイント

酒器の螺鈿の表現が実に美しい。アクセサリーの表情もよく、ユニークなキャラクターが目を引く。螺鈿がうまく組み込まれている。

Profile

川村 友美

川村 友美Tomomi Kawamura

1987
石川県金沢市出身
2011
金沢学院大学美術文化専攻科 美術工芸専攻 卒業
金沢卯辰山工芸工房 入所
石川の伝統工芸展 入選
日本クラフト展 入選
高岡クラフトコンペティション 生活者が選ぶ消費者賞
2012
金沢卯辰山工芸工房「31人の感性」/金沢21世紀美術館
2013
テーブルウェア大賞 佳作
世界工芸コンペティション・金沢2013 〜茶の時空間〜 入選
雪のデザイン賞 入選