一器多用の道具たち
使い勝手のいい輪島塗を、もっと現代の日常に。
塗師屋 大﨑庄右ェ門
大﨑 悦子
丼から汁椀、飯椀、小鉢、小皿まで、食事をすべてカバーできる応用力と、すっぽり一つに収まる収納力を併せ持つ重ね椀。 皿はもちろん蓋にもなるし、腰高のシルエットや漆の艶は、盛った料理をさらにおいしく見せてくれる。 普段着の食卓から少し気取ったシーンまで、ひとつの器で多用途に活かせるのが魅力的だ。 現代のコンパクトな生活空間になじむ器を、との大﨑さんの思いが込められている。
一方、シンプルな折敷は、鮮やかな赤色と乾漆の黒色とのリバーシブル仕立て。 大中小が用意され、中と小を並べれば大と同サイズ。皿、トレー、ランチョンマットと自在な使い方が期待できる。 「朝は赤のサイドでシャキッと目を覚まし、夜は黒のサイドでゆったりクールダウン、などと楽しく使っていただければ」 と大﨑さん。 出番が減ってきた漆器をもっと日常に届けようと多彩な提案を行っている。
不幸中の幸いか、能登震災で壊れた蔵から昔の輪島塗が多数見つかり、意匠やフォルムの新鮮さに目を見張った。 「ほんの少し使い方を工夫するだけで、今の暮らしにすっと融け込める輪島塗がたくさんあります。 その方法をお伝えするのが私の仕事」 と漆の明日を見つめている。