金沢旧市街をそっと縫うように走る新竪町通り。
感度の高いショップと古い商店街が共存するストリートの中程に、竹俣さんの店舗兼工房「KiKU」はある。
白を基調とする店内には、アクセサリー、香立てなどの金工品はもとより、竹俣さん自らが選んだ漆器やガラス器が穏やかな表情で佇む。
使うことで、毎日がよりおしゃれに、楽しくなるようなものを提供したいという。
ハレのための高級品でなく、使い手の日常を大切にするのが彼のスタイルだ。ショップ名も、キク科の花が世界中どこにでもあることに由来する。
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「自分の作品にサインはしません。僕の手から離れるとお客様のプライベートに入り込んでしまうわけですから。
使いやすく、使って楽しいことが重要ですね。作り手が一方的に主張するようなモノは作っていないつもりです」。
着物に似合うものが欲しいとの声から生まれた、和のアクセサリー。
長い年月、日本の人々に親しまれてきた伝統紋様は、今彼の手を経て、現代の暮らしに息づくアイテムへと生まれ変わった。
ショップ名「キク」には、目利く、鼻が利くといった五感の可能性も込められている。
将来はカトラリーや玩具も、と語る竹俣さん。彼の五感が奏でる世界は、静かに、そして着実に広がっている。
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