粘土をよじれたワイヤで切ったときの独特の模様や質感が、木片の柾目を思わせる「小さな宝物箱」。
色粘土を組み合わせ、パステルカラーの渦を作った「練り込み蓋物」。蓋を持ち上げると、波状に切った合わせ部分にマーブル模様が現われる。
そして九谷焼の土に砂を混ぜた「たまご」。どれも蓋物だが、とくに用途は考えていない。
「使うことよりも作る楽しさを追いかけて」作られたもの。無論、自分の作品を「おもしろい」と気に入ってもらえればうれしい。
岡本さんの作陶は、決まったイメージなりテーマなりが最初にあるわけではなく、なんらかのきっかけから実験的にスタートする。
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たとえば、「小さな宝物箱」ではねじれたワイヤを使う方法、「練り込み蓋物」では練り込み手法のように、ある成形や加飾の方法がきっかけとなる。
そして粘土を変えたらどうなるのだろう、ロクロを手びねりにしたらどうだろう、という具合に自由な創作を試みるうちにモチベーションが膨らんでいく。
そうした過程に、自分なりの新たな発見を期するのである。
岡本さんには、磁器か陶器か、どこの土を使うか、どの産地に属するのかといった自らを規定するものがない。
純粋に「創作の楽しみ」を求める姿勢だけが、その作品を通して伝わってくるのである。
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