『たまもの』
Aluminum Casting
ものづくりの現場はおもしろい。製品とは別に、その製造過程で生まれる副産物になぜか心魅かれることがある。日々アルミ鋳造の現場に立つ前田さんと、デザイナーの奈良さんとが共有するのは、そうした意識の外、人の手が届かないところで生まれる現象やモノに“美”を見つける視点だ。
たとえば、溶けたアルミを型に流し入れる際に発生するアルミの塊。大量に生まれ、やがて再溶解される塊の中に、思わず手にとりたくなる魅力を湛えたものが見つかることがある。
二人の審美眼にかなった金属塊に少し手を加え、新たな命を吹き込んだのが『たまもの』だ。
やきもののような肌合い。そして花器として使うならば、枝物に耐える重さが特徴。意図的に設計されたものではないので、ひとつとして同じものはない。そこには、鋳物の神様から賜った作為のない美しさが宿る。