実のなるような
銅がいざなう色。ろくろが導くカタチ。
山﨑 美和
ふっくらと木の実のような一輪挿しが色とりどりに並ぶ。その脇に寄り添うのは、同じように優しげな表情のティーポット。赤、青、緑…。
どの色にもじわりとにじみ出す独特の味わいがあるが、「これは銅の色なんです」と山﨑さん。銅を用いるのが山﨑さんの作陶の特徴である。たとえば一輪挿しは、銅を混ぜた釉薬を素焼きした生地にかけている。一方、ティーポットの線描などは、象嵌の技法で銅を埋め込んだもの。それらを還元焼成し、焼き方を調整しながらさまざまな色を生み出していくのだという。
「銅はすごく敏感なので、窯の中の位置や生地の厚さなどで色ががらっと変わってしまいます」。窯から出たものを見て泣きたくなることもあったそうだが、その難しさがまた面白いと語る。
色とともにもう一つ、彼女がこだわっているのが形である。ろくろが好きで、ろくろが自ずと生み出す無理のない形を大切にしているそうだ。穏やかなで美しいたたずまいは、手の中の収まり具合も心地よい。きっと使い手たちに楽しく心豊かなひとときを届けていることだろう。
高知で生まれ、沖縄で学び、金沢に創作の場を見つけた山﨑さん。今日もろくろの動きに身を委ねながら、銅がいざなう表情に思いを馳せている。