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群青の海と岩礁、そのむこうにぽつんと家屋。もの寂しい日本海の磯の風景が広がる。針生さんは丹念なスケッチを元に、器にたそがれの浜を描き出す。多くは、花鳥や山水などを題材とした日本画からインスピレーションを受けるという。今回、出品した作品「今様洲浜図(いまようすはまず)」も、日本画によく取り上げられる「洲浜図」を自分なりにアレンジしたものだ。 針生さんの器でもっとも特徴的なのは、描かれた風景に遠近感があり、深みが感じられることだろう。これは、素焼きのあと、まず釉彩で色を付けておき、本焼きし、上絵を描くという二重の加飾によるもの。 |
以前は画家を志したときもあったが、陶芸の分野に進んだ針生さんにとって、自分の素地を生かすために選んだ表現技法といえる。九谷焼技術研修所に入ったのも、上絵の本場に学ぶためだったという。
目下は渚の景色が多いが、広く石川の風景を取り上げ、「器に浪漫の趣きを取り入れたい」と考えている。それは、器に料理を盛り、茶を汲んで飲食を楽しむことより、器から溢れる浪漫や郷愁に浸ることを主眼とする、そういうあり方の器といえよう。 |
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