金沢土産といえば、九谷焼、輪島塗、加賀友禅。格調も高いが値段も高い。そこで高橋さんは考えた。気安く買えて金沢らしさも味わえるキッチュな土産物があってもいい、和風の趣のあるバッジがあってもいい、と。それがこの金沢バッジである。
直径25mm。紙の上で気ままに筆を走らせ、丸くくり抜く。そこに金沢名産、1万分の1mmという極薄の金箔を乗せ、マシンでシーリングするだけ。考え抜いて作るより、目をつむってひょいと抜いたほうが魅力的なものができるらしい。一つとして同じものはないし、作れない。
「バッジって面白いですよ。胸につけるだけで印象が変わってしまう。こんなに小さいけれど、しっかりメッセージを発信しているんです」。
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幼い頃からバッジマニアだった。特に関係者のみが持つ販促ツールとしてのバッジに興味津々。化粧品、チーズ…販売員の胸にバッジを見つけると母親を介して頼み込み、譲り受けたという。バッジコレクションは今も大切に保管しているそうだ。
大上段に構えたものとは全く逆の存在に、ニコニコと目を輝かせて取り組む高橋さん。本業は、学生達にグラフィックデザインを教える先生である。遊び心いっぱいの先生ゆえに、授業も様々な遊びにあふれ、時には教室を飛び出して外での人間ウォッチングにおよぶこともあるという。このバッジもきっと、どこかの街の誰かの胸の上で、金沢の遊び心を楽しげに語ってくれるに違いない。 |