この道に入って30数年、加賀友禅作家として独立したのが25年前。たんすに眠ってしまう高価な着物だけではなくもっと身近に感じられる加賀友禅をと、20年ほど前から行灯や衝立、壁面パネルなどの木製品のほか、金箔パネル、インドの民族衣装サリーまで、さまざまな素材との出会いを探ってきた。
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穏やかな人柄だが好奇心も旺盛で、思い立ったら即行動する久恒さん。今回の作品はガラスとのコラボレーションである。金彩や臙脂(えんじ)、黄土、藍、草、古代紫の加賀五彩などで描いた友禅の布やプリントした友禅柄を、ガラスとEVAという安全性の高い樹脂とではさみ、高温でコーティングする。すると、熱で溶けた樹脂が布目に浸透して加賀友禅本来の深い色合いが蘇る。「友禅流しの際、水中にある反物は不思議なほど色鮮やかで美しく見えます。その瞬間を再現できれば」という思いからのチャレンジだそうだ。
モチーフは着物と同様やさしい自然の草花で、和菓子にも洋菓子にも、またフルーツやオードブルなど、用途も多彩。現代の暮らしに溶け込む友禅の誕生となった。加賀友禅の原点に軸足を置きながら、衣食住に友禅を提案しようと名づけた「友禅空間」。挑む日々が続いている。
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