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ガラスでできているのに不透明な黒い箱。箱なのに物を入れる空間が小さい箱…。ガラス箱に独自の世界を展開する田さん。これらの箱を飾るのはレース(lace)というモチーフである。 レース編みの歴史は古い。家紋のように代々伝わる文様があり、模様一つ一つが意味を持つ。これに魅せられてガラスにレースをと思いつき、キルンキャスティングの技法で形にしていった。通常この手法は、ガラスを型から出した後に仕上げのデザイン加工を施す。だが、大学で金工を学んだ田さんは原型段階で細かく作り込み、型から出せばほぼ完成、という鋳物の技法を借用した。粘りの少ないクリスタルガラスを素材に、できあがったのは細緻なテクスチャーを持つ薄手の箱。黒いガラスを使うのは「光を通さないガラス、という存在に惹かれているのと、レースが際立つ」からだ。 |
また、「余白」という言葉を使って、主役の影で見過ごされがちなものに光を当てた。箱でいうなら、主役は物を入れる空間。ならば箱の「余白」とは側面の壁の厚みだととらえ、壁部分のガラスを極端に厚くした「余白のための箱」を作り出した。「用」のものではないが、箱という役割を与えたことでふれる楽しみも生まれてくる。既成の価値観をするりと抜けて、自身の思いを自身のスタイルで形にする田さんである。
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