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非鉄金属で大型オブジェを制作した時期もあったが、5年前、金沢への移住をきっかけに鉄に向きあい始めた。「工芸が暮らしに根づく金沢では、人は日常で使える物を求める」と、身近な鉄を手に取った。鉄はさびる、風土と呼応しながら。日毎に風貌を変える鉄を、そしてさびを面白いと感じた。重く冷たい鉄に、さびは温もりを与えているように思えた。さびはデメリットではない、メリットにもなり得る。それが今回の制作の原点である。「自在鐵の花器」は名の通り、平置きでもよし掛けてもよし。茶席の掛花や燭台をヒントに制作した。 | 時間を置いてさびさせた後、液体ガラスでコーティング。実用の処理をしつつもさびの温もりをそのまま表現した。柱やかもいに掛けるための、柄が1メートル長のものもある。「湯のこもるカタチ」は、かつて日用品であった鉄瓶を現代に置き換えたものだ。底が平らなのでIH使用も可。一度さびさせた後に漆を数回焼き付け、独特の風合いを出した。端正な風情は、置くだけで一つの空気感を作り出す。和と洋が共存する現代の住空間に、坂井さんの「鐵」は自然な姿でたたずんでいる。 |
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