代々加賀友禅を業とする家に生まれ育った奥田さん。父親は、奥田染色の社長であり、加賀友禅作家。有数の染工場と職人を抱えながら、着物離れが進む時代を生き抜いている。奥田さんがプロデュースするフィールドは、広い。手描きから型染めまでを、絹にも綿にも施す。着物はもちろん、のれん、半纏、クッション、卓布…。加賀友禅ならではの“用の美”を求めて、試行の日々が続く。
「友禅は平面の仕事ですから、デザインが命。たった一枚の布でも、驚くほど豊かな表情が出せるんです」。
今回のプロデュースは、伝統紋様を配した小風呂敷。「春夏秋冬」と「祝」がモチーフ。季節に合わせて、場に応じて、風呂敷も衣替えして使ってもらいたいという。
「進物品を風呂敷で包む折などに、四季折々の柄を選んでいただこうという提案です。 |
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贈る側はちょっと贅沢な気分に浸れるし、受ける側は細やかな心遣いに感じ入る。日本人が忘れかけているおもてなしの心を、加賀友禅を通して伝えていきたいですね」。
正絹ちりめんに一枚一枚、丹念に手描きし、手染めする。湿度や気候に左右されるため、一枚ごとに風合いが微妙に異なるのも、手作りなればこその魅力。霊峰白山の恵みの伏流水で洗い清められて、色鮮やかに仕上がった逸品である。
循環型社会を睨んで、風呂敷が再び脚光を浴び始めている。時代のニーズをどう捉え、どう応えていくか。奥田さんの腕の見せ場である。 |