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隙間なく並ぶ作品また作品。針谷さんのアトリエの1室の光景である。年間の約半分は個展などで全国を回り多忙を極める彼女。いったいどこからこんな制作意欲が湧いてくるのか。作品を手にとると、さらに驚かされる。琥珀や蝶貝、水牛の角といった素材に、太陽や動物、花たちが蒔絵の技巧を尽くして描かれている。あるものは軽やかに、あるものは愛らしく、あるものは格調高く。そこは色漆や金粉、貝がきらめくまさに小宇宙だ。 好きなモチーフは、太陽やふくろう。「身につける人に元気や運をあげたいという意味も込めているんです」。ふくろうの瞳はアワビ貝を使った螺鈿技法で仕上げ、青く神秘的な輝きが幸運の象徴のよう。 |
実際にラッキーアイテムとして購入していく人も多いそうだ。最近では、若い人たちのファッションに合うようにと、装飾石やビーズをあしらったチョーカーも手がけている。 そんな針谷さん自身はアクセサリーをつけない主義。「わたしにとってのアクセサリーは、蒔絵を自由な発想で描ける手段のひとつ。先入観やこだわりがないから、お客さんの意見を取り入れながら制作しているんです」とあくまでも柔軟だ。 個展の時期には全国に3000通余りのDMを発送。親子2代の顧客も多いという。漆工芸を通して出会った人たちが「私の財産」とも語る針谷さん。「期待を裏切らないよう、いつも新作をお見せしたい」。彼女を後押しするのはこの思いに尽きるのだろう。 |
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