糸から生まれる輝きの旋律
金色の光が、ふたつの工芸の未来を照らす。
株式会社エイチツーオー
木和田 里美
平成20年設立のデザイン会社を拠点に、大切な人にそっくりの編みぐるみ制作やグラフィックデザインなどを行っている木和田さん。金沢らしいデザインを追い求める中でたどり着いた伝統工芸に、かねてより魅力を感じていた16世紀ヨーロッパのタティングレースを結び付け、新しいアクセサリー「Gold Knot(ゴールドノット)」を生み出した。木和田さんのこれまでの経験があってこその発想である。
素材は金属ではなく、糸。レース編みに本金箔を貼ったことでしなやかなレースの風合いを活かしつつ、イヤリング1個が1gという驚きの軽さを実現した。モチーフは加賀藩由来の梅鉢紋。また、金箔の圧倒的な華やかさをあえてワントーン落とし、マットな質感にして日常使いも可能に。伝統工芸をより身近に感じさせるのも木和田さんのデザイン意図だ。
彼女の金箔タティングレースはすでに、歴史あるタティングレースの世界でも一つの手法として認められつつあるという。世界中にいる作り手から梅鉢紋以外のさまざまな形が生まれ、金沢金箔の可能性が広がれば、と木和田さん。
「アンティークとして受け継がれるまでに育て、金箔とタティングレースそれぞれの技術を後世に残したい」。小さなモチーフに大きな夢が託されている。