珠玉のフォルム
伝統の型打ち技法が生む器で、心豊かなひとときを。
宮腰 徳二
300 年に亘って九谷焼の成形技術として受け継がれてきた 「型打ち」 の技法。 ろくろ挽きした生地を素焼きの型にはめ、成形してゆく。 熟練した技術が必要とされる上、時間と手間がかかる。 大量生産、大量消費の現代、この技法を継承する人はごくわずかとなった。
宮腰さんは職人として 22年、この技法に携わってきた。正確な仕事を求められる職人の世界で経験を積み、伝統工芸士の認定も受けた、いわば筋金入りの職人だったが、 「自分の世界を新たに描いてみたいという思いがふつふつとこみ上げてきて」、 満を持して独立した。
美しく繊細なフォルムが醍醐味である。 精密にしてのびやかなライン。 緻密な立体感が豊かな陰影を生み出している。 揺るぎない技術と、新しいものを生み出したいというほとばしる思いが作品として昇華した。 さらに器の軽さ。 機械成形とは違い、手の圧しか加えていないため驚くほど軽い。 普段使うものだからと、使い心地にも気を配っている。
「アイディアを自由に形にできるのは型打ちならでは。 フォルムの美しさ、手にとった時の感触で勝負したい」。 草花や水、風なちの新たな可能性を探っている。