臙脂(えんじ)、黄土、藍、草、古代紫…。深みのある加賀五彩で描かれた文様が、漆の木肌にしっくりとなじむ。機能性と伝統美を兼ね備えた「友禅張り漆トレ―」は、友禅に高品質のポリウレタンフィルムを圧着し、さらに漆を塗りこんで仕上げてあるので防水性が高い。漆部分は素朴な石目地仕上げで、指紋や傷も付きにくい。「加賀藩の施策によってこの地に根付いた伝統工芸は、どれも素晴らしいもの。組み合わせることで“1+1=2”以上の魅力を引き出したい」と語る太田さん。いつものカップやスイーツすらもちょっと澄まして見えそうな、そんな小粋なトレ―に仕上がっている。
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色褪せしにくい染料を使い、裏地にもシルクを用いた「加賀友禅名刺入れ」。硬すぎてふたの部分が浮き上がったり、柔らかすぎて名刺の角が折れたりせぬよう、厚みに腐心した。図柄はバイオリンなどのモダンなものや花鳥風月など、多彩。オーダーメイドもできる。縁の千鳥縫いに至るまで、すべてが意匠を凝らした手仕事。手のひらの上の小さな伝統が見る者の心を和ませる。「いい友禅を作り続け、その魅力と心を後世に残したい」。地道な努力に裏打ちされた創意が、友禅の世界を無限大に広げている。
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