大阪で開催されていた人間国宝展で川北良造氏の作品を見た。「探していたものにやっと出会えたという感じ」。
両親にも相談なく、研究所への入学を決め、山中での木地挽き修業の生活が始まった。
以前から生活雑器の仕事に興味があったし、形作りから勉強できる木地挽きにいつしかのめり込んでいった。
それまで漆器と接する機会がほとんどなかっただけに、最初はすっきりとかっこいいデザインに憧れ、自分でも作ってみたかったという奥のさん。
しかし、今回の作品は小さくて可愛らしい器ばかり。「自分でも驚いてるんです。ほんとはこんな世界が好きだったんだと」。
小物入れや香合にも使える手のひらサイズ。素材に硬くて動きの少ない水目桜を選び、ふた合わせにも気を遣った。 |
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小さくてもおもちゃっぽくない精巧さ。大人の遊び心、安らぎを感じさせるユーモアに富んだ作品だ。
この業界に身ひとつで飛び込んでからすでに5年。オリジナルな作品制作は昨年から始めたばかりだ。最近は使い手の目線でも器作りを考え始めた。
「展示会では、お客さんが新鮮なものはないかと探しているんです。それが何なのか、今作り手は問われているのでは」。
たぶん流行ではないと彼女はいう。飽きずに長く使える新定番ではないかと。
春には結婚し、金沢でパートナーとともに工房を構える奥のさん。自然あふれる環境でどんな器が生み出されるのか、今から楽しみだ。
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