アクセサリーを主に制作しているが、最近ではオブジェ的なインテリアも多く手がける上田さん。「私の作品を気に入ってくれる人は、個性的な人が多いみたいですね」と笑う。見るものの想像をかきたてる抽象的なフォルムは、確かに「ノーマル」では飽き足らない人々の欲求を満たす何かを持っている。
植物の根をイメージした「ROOTシリーズ」の香立や燭台は、畑仕事にはまっているという彼女ならではの発想。にょろりと伸びた足は一見非力そうだが、しっかりと根を張って台を支えている。
注目したいのは、義母様が持っていた一刀彫の雛人形に惚れ込んで制作したというシルバーのおひなさま。 |
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一刀彫の持つ面のシャープさ、シンプル感、そしてコンパクトなサイズ。それらを念頭に入れて構想を練り、何度も図面を引いてシルバーの持ち味を引き出した。6cmほどの大きさの雛人形には、すかし彫りを施してあり、華やかな色はなくとも金属的な冷ややかさを感じさせない。それは決して「ノーマル」な雛人形ではないが、新感覚の伝統を感じさせるのは一刀彫からヒントを得ているからだろうか。
「技術なしに表現することは難しいですね。金属は一枚の紙に似て、どんな形にも変化します。思い描いた形をそのまま表現できたときが一番ですね」。職人気質とユニークさを追求する姿勢には、新たな可能性が光る。 |