そこにあるだけでもびっくりしてしまいそうな大きな器ですが、お鮨やお菓子をのせるだけで、パーティーの主役になり、おもてなしの会話が弾んでしまいそうです。山口さんは、いつもは木の持っている自然な素材感を生かした荒削りの斫の器がお得意ですが、いつもはご主人を支えながら働いてくれていた奥様の「使う人が好きなように使ってほしい」という、使い手としての遊び心が反映された逸品です。一見、こんな木地をどこで手に入れたんだろうと考えてしまいますが、実さんのお父様が材木屋さんで、二人でそこにあった木の皮を見ていたら、捨てるのがもったいなくて、漆を塗ってみようと思ったのがこのシリーズ誕生のきっかけです。 |
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当初は小さなおしぼり受けやはし置きが中心でしたが、自然がデザインした形をそのまま活かして、大鉢を作って朝日クラフト展に出品したら見事入選し、その後どんどんイメージが広がって今の形が生まれました。あまり難しいことは考えずに作っていらっしゃるようですが、資源を無駄なく利用しようという今の時代とも相まって、その思いは爽やかです。ダイナミックなのに肩のはらないゆったりとした形、親しみのあるあたたかな素材感。30年近く、漆で真っ黒になりながら、励まし合ってきたお二人ですが、夫婦でふっと息を抜ける癒しの一時の器です。 |