糸と針の造形
架空の花が咲きそろう。
刺繍がいざなう不思議の世界。
atelier taffeta
髙 知子
「hanatama」。花の刺繍を施した、手のひらに収まるほどの小さな布玉が髙さんの原点である。「手芸というよりも図工の時間に近い感じでしたね」。平面に刺繍をするというよりも、立体を作り出すような感覚が面白く、丸い玉にせっせと花を刺繍した。どの花もすべて彼女が創作した架空のものだ。ポップな表情であったり、不思議な生物のようだったり。手の赴くままに生み出した花々が布の原っぱに咲きそろった。
たまたまブローチサイズだったため、ブローチとして人に譲ったりしていたところ、独特の世界に目をとめる人が増え始め、気がつけば刺繍作家になっていたと微笑む髙さん。色とりどりの「hanatama」からやがて白一色のバージョンも生まれ、幾何学模様をモチーフにしたもの、シルクスクリーンと併せた作品も登場。壁掛けなどのインテリアアイテムにも広がっていった。
平成23年に、ペルシア語で「紡ぐ」を意味する「taffeta」という名のショップを開店。店内に制作の場を置くと同時に、「atelier taffeta」の名で作家活動を行っている。オリジナリティあふれるデザインへの注目度は高く、平成26年には図案集も出版された。「手を動かすうちにイメージが膨らんで新しい図案が出てくるんです」。次はどんな世界を紡ぎ出すのか。今後の活躍が楽しみである。