伝統九谷の美を
ミニマムで表現
独自の技術開発で、
九谷焼をもっと身近なものに。
株式会社 青郊 (青郊窯)
北野 啓太
青郊の特徴は、和絵具の開発とスクリーン印刷の導入にある。長らく九谷和絵具の研究を行っており、平成21年の食品衛生法の改正で食器の鉛溶出基準が厳しくなったことを受け、無鉛絵具を開発した。九谷和絵具はガラス質の艶や層の厚みが本領であるが、青郊の無鉛和絵具は、有鉛和絵具とほとんど区別のつかないレベルに達している。
一方、スクリーン印刷を導入したのは、「より多くの人たちに、九谷焼の器を普段使いしてほしい」という北野さんの思いからだ。絵付けの印刷化というとマイナスイメージが浮かぶが、そこは窯元の力量で解決。手描きと比べても遜色のないクオリティを実現した。器の曲面に印刷を施すには、縫製の型紙のように、まず絵付けシート用の型を取るのだが、これが難しい。さらに、このシートを継ぎ目がわからないように貼る作業も熟練の腕が要る。これら技術の結集が、手描きと同様の質感を醸し出している。
今回の汁次と箸置きは、小さなアイテムでも伝統の九谷らしさを訴求できることを示したもの。同時に、色絵の豊満さを伝えるにはバリエーションが必要、という思いもあった。
九谷焼の革新ともいうべき新たな和絵具と印刷技術。青郊の次なる挑戦が期待される。