艶やかな絹の色糸が見事な模様を描き出す…ひと針ひと針を手で繍い上げる加賀繍は、室町時代初期に加賀地方に伝わり、江戸時代には加賀藩からも珍重された。
「昔から、手を使って何かを作るのは好きでした」と語る葭ヶ浦さんが、加賀繍と出会ったったのは約20年前。その美しさはまたたく間に彼女を虜にし、基礎をみっちり学んだ頃には、頭の中に作りたい作品の姿がどんどん浮かんできたそうだ。葭ヶ浦さんは、デザインや下絵から完成まですべての工程をこなし、制作、作品発表の拠点としてギャラリー繭鳥を主宰。「嬉しかったり、悲しかったり、その時の感情がすべて仕上がりに反映されます」という作品は、加賀の上質な手仕事として全国でも評判が高い。
|
|
このところ葭ヶ浦さんのトレードマークになりつつあるのが、カメリアをモチーフとしたシリーズで、バックなど日常に使えるアイテムも多い。熟練の技を持つ職人ですら1cm仕上げるのに1時間はかかるという加賀繍だ。深刻な後継者不足に悩むこの世界で、奮闘を続けている葭ヶ浦さん。最近では、漆や金工などとのコラボレーションにも積極的に取り組み、忙しい日々を送る。
「どんな作品でも、これで完璧と思ったことは一度もありません」という言葉には、繍の世界一筋に生きてきた名手としての意気込みが感じられる。
|