金沢美大でデザインを学んだ後、他の仕事に携わったこともあったが、気がつくと加賀友禅の世界にいたと語る斉藤さん。
以来約20年間、友禅作家として着物を描き続けてきた。
だが、次第に自分の描きたいものと仕事として売れるものとのギャップに悩むようになっていったという。
オーストラリアで活躍するファッションデザイナー、Akira Isogawa氏に出会ったのは、ちょうどそんな頃だ。
彼のドレス生地を友禅で制作したことをきっかけに、着物という枠から抜け出して、もっと手軽で身近なアイテムに染色を、と考えるようになった。
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「とにかく、色が好き。色で遊ぶのが好きなんです。だから、自分の好きな色で好きなように描きたくなって…。
それで作ったのが、今回のマフラーです」。
布の上で踊る闊達なデザイン、自在な色使い。加賀友禅という伝統の世界から、斉藤さんはひょいと片足を踏み出した。
その作品は、遊び心のあるものから正統が息づくものまで、すべてがみずみずしい魅力に満ちている。
「でも、扱う素材は、やっぱり着物と同じ日本のシルクです。
発色と手ざわりが違いますからね。布で表現できるものなら、何でも試してみたいと思っています」。
彼女の挑戦は、今始まったばかりである。
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