大通りから一歩入った静かな路地に蔦屋漆器店がある。江戸時代創業で、現5代目が営む老舗だ。
そんな輪島塗の世界に嫁いで20年ほど経つというのに、佳子さんが漆器製作に関わったのは今から7年前のこと。
それまで輪島塗は、男性がメインとなって作られることが多かった。
ある時「輪島塗は現代生活に合った器が見当たらない。女性の視点で考えたらどうか」というコーディネーターの指摘をうけた。
「漆は器としてはとってもすばらしい魅力をもっているのに。
でも、確かに普段使っていながら、なぜかしっくりこないと思っていたんです。
テーブルの上に乗るのは漆器だけではないはず。陶器もガラスもある。そんな器たちと融合する輪島塗を作りたい」と、夢は膨らんだ。
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築80年の古い造りを活かしたギャラリーをオープンさせた。家具デザイナーがプランニングした和モダンでスタイリッシュな空間だ。
「器は実際に料理を入れてみます。その使い勝手のよさだけではなく、インテリアとしても楽しめるものにしたいのです」。
その言葉通りギャラリーには、佳子さんがデザインを考えた洗練された器たちが芸術品のように並ぶ。なかでも今回出品の八角重は一段と美しく輝いている。
「年にひとつずつお気に入りとして揃えたい、そんな風に思ってもらえたら」。
漆器の作り手として、そして使い手の主婦として、両方の目で捉えた作品は息を吹き込まれて鼓動を始めた。
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