自然あふれる山里で料理旅館を営む6代目の和田さん。食材がもつ本来の旨みを最大限に引き出す土鍋を探していた。「20ばかり買って試しましたが、納得できる鍋が一つもなかった」。それなら作ってしまおうと考えたのが、この鍋の発端だ。わざわざ九州・有田の窯元まで出向き、自分の思いを伝えた。しかしすぐにいいものができるわけでなく、試行錯誤を繰り返し1年半が流れた。
ようやくできあがった手挽きの土鍋は、ふっくらとした縦長でやわらかな曲線を描いたボディ。蓋が約1kg、胴体が約3kgと重い。この重さや鍋の厚みが米一粒一粒の細部まで、煮物も内部まで均等に熱をいき渡らせる。保温性にも優れ、 |
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おまけに冷えないように鍋の着物まで用意。何から何まで、本物の料理人だからこそ考えついたこだわりの鍋である。 冬の猟期には熊や猪を撃つハンターでもある和田さん。この自慢の鍋で味わうとよりおいしいに違いない。鍋は口福鍋(くちふくなべ)と命名された。『こうふくなべ』とも読め、大勢で鍋を囲んで美味しいものを味わう幸せも込めている。
また宿では、熊の脂身を利用した手作りの「熊の油のハンドクリーム」や「熊の油配合の石けん」も販売。鍋の題字も含め、これらのラベルは奥様の筆によるもの。主人と女将の息もぴったりで、「これからも料理人の視点で考えた器をつくりたい」と語るふくよかな笑顔が印象的だ。 |