10年間広告とマーケティングの仕事に携わっていたが、「他人が作ったものの手助けよりも、自分で生み出す仕事をしよう」と思い家業を継いだ小谷口さん。その作品はアイデアと哲学に満ちている。
漆黒が美しい『nero』はイタリア語で黒という意味。世界の一流レストランが採用しており、最も料理を引き立てる色だという。24センチ角、8.4センチ厚の中に12アイテム、二人分の食器が積み木のように収まったスタイリッシュな逸品である。御影石を切り落として抉ったイメージを出すために面で塗り分けし、全て統一されたデザインでまとめられている。バカラやウエッジウッドといった高級な食器を一通り |
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経験した富裕層の嗜好性を考え抜いたかたちである。 一方『脚つき椀』はユニヴァーサルデザインをめざした作品。老若男女はもちろん、器を持つ日本文化に馴染みのない外国人でも、体に障害のある人でも「同じように持ちやすい」食器である。お椀をブランデーグラスのように持つという解決法で、あらゆる人が使える普遍性を追求している。
全ての作品に共通している理念は、ずっと長く使えるもの。世界のさまざまなシーンを見つめながら、国産の木など自然素材だけを地元職人達の手にかけ、新しい概念の山中漆器を生み出していくに違いない。 |