ひとつひとつのみで彫り出した木の皿を、そっと持ち上げ、ささえる陶製の足――今川さんがつくる器は、木工と九谷焼との不思議な取り合わせが、魅力だ。このコラボレーション、実は木工も焼き物も、今川さん1人の手によるものだという。
焼き物の里に生まれ、九谷、信楽と陶芸の道を歩んでいた彼女。ところが、木工という表現法に出会い、木工の魅力にとりつかれてしまうことになる。
「のみで彫り続けると汗だくになるんですが、体を動かして汗をかくのがほんとうに楽しくて、気持ちがいい。」以来、陶芸は続けつつも、軸足を木工へ移しての創作活動となる。 |
|
ただ、時間と手間のかかる木工品はどうしても売価が高くなるため、意図するほどには売れない。少しでも多くの人に自分の作品を使ってもらうには、どうすればよいか…。
考えついたのが、木と陶のコラボレーション。のみ目を残した状態で仕上げとし、高台を彫り出すかわりに陶製の足をつけるという彼女ならではの手法だったのだ。
独自のスタンスで、自分の持ち味を生かした作品づくりをめざす今川さん。のみ目の器同様、滑らかな肌になるまで研ぎ出された木の器たちも、それぞれに彼女らしいやわらかなぬくもりを湛えている。 |