加賀毛針は、どぶ釣りという鮎の毛針釣りの針です。加賀藩では、武士の鮎釣りを奨励することが、足腰の鍛練になり、精神の修業にもなるということから武士の必修科目として続いてきました。北さんのご主人は、父は市電の運転手でしたが市電が廃止され、もともと釣り好きだったので釣り具屋を開店。母が女学校卒業以来鮎の毛針を巻いていましたので、いつしか家業のお手伝いに。しかし、毛針はいくら上手に巻けても、鮎が釣れなければお客さんから叱られる結構シビアな世界です。そんな苦労を重ねているうちに、8年程前、博多のデパートの催事に声をかけられ出展。しかし、博多では鮎をどぶ釣りで釣ることがないようで「これで鮎を釣るの?」とお客さんに言われてびっくり。
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それでも、なんとかお客さんの気をひこうと、即行で羽毛とラメ糸を束ね安全ピンにつけてみたら綺麗なコサージュになって、お客さんに喜んでもらいました。「軽いから、柔らかいブラウスにいいわね」とか「帽子に合うわ」と言われて嬉しくて、石川県地場産業振興センターの新商品展で会長賞をもらったり、金沢市長さんに海外からのお客様のプレゼントに使ってもらったり、創作意欲にますます拍車がかかりました。もともと絵を描くのが大好きだったので、今では額やたんざくなど、インテリアの装飾品にも挑戦中で、いろんな人に加賀毛針の美しさを味わってもらいたいとその手を休めることがありません。 |